フランス製本




10月に入り秋も深まってきました。読書の秋というわけではないですが、睡眠導入剤の代わりに本を買ってきました。最近はAmazonを利用することがほとんどですが、今回は久しぶりのリアル書店電子書籍も話題ですがやっぱり日本人は紙の本が向いているようです。自費出版アドバイザーをしていることもあり、今回は本の内容は別にして装幀の潮流を気にしながら書棚を眺めていると、珍しくフランス製本の出版物が目にとまりました。

フランス製本ってご存知ですか?本の装幀は大きく分けてハードカバー(上製本)とソフトカバー(並製本)に分かれます。この中間がフランス製本です。

印刷機が普及する前は、本はとても高価で、一部の貴族や大富豪のものでした。貴族たちは購入した本を、お抱えの装丁師に命じて豪華な表紙を作らせ、上製本に仕上げさせるのが一般的でした。この為、筆写されたり印刷された本は、本格的な表紙を付けないで、簡単に取り外せるように、小口(横)だけでなく天地(上下)にも折り返しを付けた仮表紙を、見返しに巻き込んで納品していました。この状態がフランス製本です。

そして普通の本は本文の天地小口の3方がきれいに断裁されていますが。この本は地と小口とだけが断裁されていて、天(上)は奇麗に断裁されていません。実はこの方が製本の技術からいうと難易度が高いのです。つまり断裁しないのだから、折口の誤差が0.5ミリくらいに折らないときれいな本にはなりません。ロットも多く製本のラインが確立すれば、断裁の工数も少なく、コストも多少ダウンできるので文庫本ではありますが、一般の書籍では少なくなりました。

冒頭にも触れましたが、電子書籍の可能性を探りだし1年以上経ちますが、取り組めば取り組むほど紙の本の良さが目立ちます。日本ではアメリカなどと違い書店流通が確立され紙の本が不自由なく買えるので、思ったほど現在の状態では普及しないかも知れません。現在電子書籍の売上が伸びているのは、リファレンスと言われる辞書や、携帯で読むコミック、アダルト系のものが多いようです。

秋の夜長、本は活字の形や組版、紙の手触り、インクのにおい装幀などを楽しみながらお読みになるのも良いのではないでしょうか。